エンパイアステートビル26個分!深刻化するNYの空きオフィススペース問題

COOQIE INC.

エンパイアステートビル26個分!深刻化するNYの空きオフィススペース問題

平日のマンハッタンのお昼時。忙しいニューヨーカーは、オフィスビルの前のフードトラックから5ドルで焼き立てのホットドッグを買い、慌ただしくデスクに戻る・・・こんな光景はもう戻らないのかもしれません。

 

エンパイアステートビル26個分の空きオフィス

不動産会社のクッシュマン・ウェイクフィールド(CW)によると、アメリカ国内の商用オフィスはパンデミック以前に比べて40%近くも空室になっており、来年にはオフィスの5件に1件が空室になると予想しています。特にパンデミックの影響を強く受けたニューヨークの状況は深刻で、稼働率はコロナ流行前の50%程度、市内の空きオフィススペースを総合すると、エンパイアステートビル26.6個分に相当すると試算されています。

 

リモートワークの常態化によるオフィススペース需要の減少

パンデミックによるロックダウンは、テレワークの普及をもたらしました。当初は数週間で終息すると思われたロックダウンが数ヶ月・数年に及び、WFH(Work From Home=テレワーク)は働き方の1つとして完全に市民権を獲得しました。ポストパンデミック期に突入した現在では、オフィスに従業員を戻したい雇用主側と、テレワークを継続したい従業員側でギャップが生じ始めています。

ブルームバーグの報道によると、リモートワークによってマンハッタンの経済から年間120億ドル以上が減り、ニューヨークのオフィス価値は500億ドルが消え去ったとされています(National Bureau of Economic Researchより)。さらにマンハッタンのオフィス勤務者を相手に商売をしていたニューヨーク中のストリートベンダーや露天商も含めると、影響は計り知れません。

 

大手企業もオフィススペース縮小の流れ

Facebookの親会社であるメタは昨年秋にニューヨークのハドソンヤードのスペースの一部を空室に、Googleの親会社であるアルファベットは総額5億ドルを支払ってオフィスの賃貸契約を解消、いくつかの拠点を閉鎖しました。アルファベットは5つの大きな拠点(ニューヨーク、サンフランシスコ、シアトル、カリフォルニア州サニーベール、ワシントン州カークランド)で、従業員の出社日を調整することでデスクを共有させるなどして、小スペースでの運営に切り替えています。
また最近ではアマゾンが、バージニア州アーリントンでの第2本社建設計画を一時中断しています。この巨大プロジェクトは、周辺地域にとって経済の天の恵みであると言われていました。

 

全米の大都市で止まらないオフィス空室化

オフィススペースの空室問題はニューヨークに限ったことではありません。ロサンゼルスではUSバンクタワー30.7個分、シカゴではウィリスタワー15.8個分、ヒューストンではJPモルガンチェースタワー29.7個分と試算されており、都市の空洞化が危惧されます。

 

オフィスの空室率で見るとロサンゼルス・シカゴのほうが高いものの、ニューヨークでは2020年から2021年にかけて30万人以上の人口が減少しました。これほど大規模な人口減少を経験したアメリカの都市は他にないと言われており、同じ期間にヒューストンが失ったのは1万2000人ということを考えると、ニューヨークのほうが影響は深刻と言えます。

 

空きオフィススペースを住宅に?

ダウンタウンの空洞化を懸念する地域の人々からは、空室となったオフィススペースを居住物件に変えて欲しいという要望が上がり始めています。ニューヨーク市内の住宅価格は異常なほど高額なことで有名ですが、もしこれらの空きオフィスをアパートメントに変えることができれば、これ以上の高騰を抑制し、住民が増えることで街に活気も取り戻せるかもしれません。

一方で、オフィス物件を住居用に改築するということは手間暇もさることながら法律も関わることなので、一昼夜にというわけにはいきません。古い建物も多く、気候的にも決して優しいとはいえないニューヨークでは、長い道のりとなるでしょう。

 

前時代的な都市構造の見直しへ

オフィスには人が戻らない一方で、ニューヨークへの訪問者数は2021年から2022年にかけて71%増加し、年間で5600万人が訪問。ニューヨークのホテルの稼働率は12月に90%を超え全米でトップとなり、5番街はコロナ前と同じようなホリデーシーズンの賑わいを取り戻しました。もし今後もマンハッタンへの通勤者が戻らないとすると、街の経済はビジネスからより一層、観光・娯楽へシフトいくと予想されます。

シカゴやロサンゼルスなどアメリカを代表する大都市のダウンタウンのレイアウトは、1920年代以降、単一用途のゾーニングによって居住・ビジネス・娯楽など、用途ごと別々のエリアに分けられてきました。コロナ以前にインターネットの普及により、この都市構造は少しずつ意味をなさなくなっていましたが、在宅ワークの浸透により一層、見直しの段階に来ています。今回の空きスペース問題が、各地の都市構造を変革するきっかけになるのかもしれません。