B2Bマーケティングの新潮流:ABMからABXへ進化するアカウント戦略
近年のB2Bマーケティングにおいて、企業が高い成果を求めるなかで再び注目を集めているのが「ABM(アカウントベースドマーケティング)」です。さらにその進化形として登場した「ABX(アカウントベースドエクスペリエンス)」という考え方も、多くのB2B企業の戦略に組み込まれつつあります。
ということで今回は、ABMとは何か、そしてなぜ今ABXに注目が集まっているのかを整理しながら、アメリカで進化を続けるアカウント戦略の最新動向を紹介します。
ABM(アカウントベースドマーケティング)とは?
ABMとは、あらかじめ特定した企業アカウントに対して個別最適化されたマーケティングを行う手法です。約20年前にITSMAによって提唱されたABMは、特定の重要顧客(または見込み顧客)との長期的な関係構築を目的とし、営業とマーケティングが連携してアプローチする戦略としてスタートしました。
ABMは現在でもB2B分野において非常に有効な施策とされており、実際に導入企業の80%が「他のマーケティング施策よりもROIが高い」と回答しています。特にリード獲得において“量”よりも“質”を重視するB2B企業にとって、ABMは欠かせない手法となっています。
ABMからABXへ:B2Bマーケティングの進化
一方で、ABMという言葉が広く浸透するにつれ、その意味や精度が徐々に曖昧になっていったという指摘もあります。たとえば、テンプレートに顧客名を差し込んだだけのメールを「パーソナライズされたABM施策」とみなす例もあるなど、本来の価値が失われつつありました。
加えて、アメリカのB2B業界では、バイヤーサイドの人数増加や意思決定の複雑化・長期化が進み、従来のマーケティング手法では対応しきれない場面も増えています。LinkedInの調査では、B2Bの意思決定に関わる人数は平均6.8人、Clariの調査では、10万ドル超の案件では14人の関係者による19回のミーティングによる協議が必要だという結果もあります。
こうした状況を受けて、ABMを顧客体験全体にまで広げた新たな概念「ABX(アカウントベースドエクスペリエンス)」が登場しました。ABXは、ABMのターゲティング力に加え、インテント(購買意欲)を起点としたエンゲージメント設計や部門横断での体験管理に重きを置いています。
ABXの実践ポイントと5つのステップ
ABXの中核となるのは、マーケティングと営業、さらにカスタマーサクセス部門までを含めた一体運営です。各接点での体験を統合的に設計し、ターゲットアカウントに最適な情報を適切なタイミングで届けていきます。
以下は、ABX実行のための代表的な5ステップです。
1. アカウントデータの基盤を整える
CRMやマーケティングオートメーション、Webのアクセス解析データ、営業活動履歴、インテントデータなど、アカウント単位での情報を一元化し、可視化します。
2. ターゲットアカウントを特定する(FIRE手法)
- Fit(適合度):理想の顧客像とどれだけ一致しているか
- Intent(関心度):購買カテゴリへの関心を示しているか
- Relationship(関係性):既存の接点や取引履歴はあるか
- Engagement(関与度):既に自社とどれだけ関与しているか
この4軸をもとに優先順位をつけていきます。
3. 効果的かつパーソナライズされた方法でアプローチ
オンライン広告、Webコンテンツ、メール、イベント、営業アウトリーチなど、チャネルを組み合わせて、一貫性のあるメッセージングを行います。
4. マーケティングと営業が連携して成約へつなげる
両チームがリアルタイムでアカウント情報を共有し、「同じ船に乗った」心構えでアプローチすることで、スムーズな商談進行を実現します。
5. アカウントの進捗を測定する
具体的なリード獲得数、成約率に加え、Google Analyticsやインテントマーケティングツールを使い、アプローチの有効性を評価します。
短期成果にこだわらず、長期視点で取り組もう
ABXは単発のキャンペーンではなく、B2B企業にとっての「マーケティング方針」に近いものです。その設計・実行には相応の時間とリソースが必要ですが、長期的に見れば、営業効率の向上、顧客との関係性深化、リード獲得の質的向上といった確かな成果に繋がります。また、ABXはマーケティング部門単独では完結しません。営業・マーケティング・カスタマーサクセス部門が足並みをそろえ、アカウント単位での体験設計と改善を継続することが顧客体験向上の鍵となります。
アメリカでは、B2Bバイヤーの意思決定プロセスがますます複雑化する中、ABM戦略の再定義ともいえるABXへの移行が進んでいます。インテントに基づいた、より体験重視のABXは、これからのB2Bデジタルマーケティングにおいて有効な打ち手となるはずです。
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